テクニカル・アドバイザーという形で広島大学サッカー部に関わっている内藤清志です。この度は中国大学サッカーリーグ2連覇、3年連続インカレ出場おめでとうございます。
私は現在、筑波大学のサッカー方法論研究室に所属しながら、他大学の講師やFAチューターとしてライセンス付与などサッカーを中心に様々なことをしています。
私と広大サッカー部との出会いは、上泉先生から広大に指導に来てほしいと言われたのが最初です。私が筑波大学蹴球部を指導していた際に先生が研究で筑波におられ、当時の筑波のスタイルに共感して下さったことがきっかけです。
私が広島出身ということもあり、最初は帰省の時に広大の練習に顔を出したのを覚えています。今だから言えることですが、その際は「これは想像以上に理想とはかけ離れているぞ…」というものでした。その時の私の感想は、ボールを奪うこと・ゴール前を固めることに執着して、いかに大差で負けないかを考えているように感じました。
一方で選手の人間性は、みなさん今と変わらず真面目で、いきなり来た私にも最大限のリスペクトを持って接してくれたと思います。ですので、この組織をなんとかしたいなと思ったのを覚えています。やはり人を動かすのは人であり、自分自身は今も大切にしている部分です。そういった部分では、上泉先生と当時の広大サッカー部の皆さんがいなければ、私と広島大学サッカー部の関係はこうはなっていなかったと思います。
初回の練習を終え次に来るにあたって、先生と相談しながら合宿に参加して映像を使って講義をしたり、時には見本とするために私の指導する中学生を連れてきて練習に混ぜたりしました。大学生はえ?なんで中学生?と思ったかもしれませんが、中学生の方が圧倒的に当たり前の技術の「質」が高く、あの辺りのタイミングが組織として「個人の技術」というものに向き合い始めたように感じます。仲が良いことで馴れ合いにあるのではなく、ミスをみんなでカバーすることももちろん大切ですが、そもそもミスが起こる確率を減らすためにみんなが上手くならないといけないという、そこに向かって組織が動き出したように感じました。組織の空気が変わり始めてからは、こうなってくるのはある程度予想ができました。
上泉先生のすごいと感じる部分は、「勝負師」としての側面です。私含め多くの指導者は、長期的にチームをどうしたいか考えてはいますが、いざ実際チームが負け続けたりすると、その計画を見直して選手起用を変えたりして、いわゆる「我慢ができない」状態になるのですが、先生はいつ連絡が来ても冷静で「今は〜で」といった分析が言い訳という具合ではなく実際にそうなってきているので、広大のこのような躍進も先生の中では、このぐらいのスパンでこうなるというのを当初よりお考えだったのかもしれません。それぐらい、周りの指導者とは一線を画していて、良くも悪くも独特で、しかしその独特という空気でさえ「計算済み」なのではと感じさせるほどです。
近年はグランドの空気の変化もピリッとした感じになってきているように感じます。真面目な組織からか、「不安」の方が大きかったグランドから「自信」というものが確実に芽生えてきていると思います。それこそが、ピッチ上で人が入り混じる「混合型」のスポーツであるサッカーにおいて、技術と同じくらい必要で私が考える「サッカー=ボールを持って相手を攻略する」ために必要な要素です。ただ、その自信というものはすぐ「過信」に変わってしまいます。全国的にみると、あるいはプロと比べると、サッカーに於いてはまだまだ上にはたくさんいると思います。勝ち負けだけではないですが、世の中は勝たないと注目しない部分もあります。「良いサッカーで結果を追求する」そこをしっかりと強く意識して、今後もやっていきましょう。