9月4日、総理大臣杯の開幕を迎えた。頭の中には「試合に勝つ」「プロになる」という強い思いだけが渦巻いていた。
そして迎えた前半30分。突然、心の中で「疑問」「憤り」「納得」「恐怖」といった様々な感情が交錯する。僕にしか聞こえない破裂音が耳を打ち、気がつけばピッチに倒れていた。準備を重ねてきたからこそ生まれる「なぜ」という疑問もあれば、同時に「これが必然だったのか」と感じる自分もいた。
翌日、明治大学との2回戦を控えたその日に医師から言われた。「手術が必要だよ」と。
…導入はこんなところで。遅ればせながら自己紹介をしようと思う。広島大学4年、
MFの中村蒼です。冒頭でも述べたように、僕はみんなより少し早い9月4日を最後に、大学サッカーを終えることになった。今、心の中には「言葉に尽くせないほどの感謝」と「よく頑張ったな、俺」という想いがあふれている。
ブログでは、僕がどのような想いでサッカーを続け、なぜ成長できたのか。その成長の根源について、自分のエピソードと感謝の気持ちを交えて綴っていこうと思う。
きっかけは、ある疑問であった。
「あいつは伸びなくなったな」という言葉を誰もが一度は耳にしたことがあるだろう。
僕はその「伸びなくなった」の言葉に恐怖心を覚えた。
「いつからだろう。差がついてしまうのは。」そんな疑問が胸に浮かび、それ以来、
常に成長することに人生の意味を感じるようになり、一度も満足することなく歩んできた。
我らの監督である上泉先生は、「毎秒勝て」と「満足したら死ぬぞ」という言葉を大切にしている。僕は、その言葉が大好きだ。
この「成長」の根源には、「目標」「仲間」「悔しさ」「感謝」にあると確信している。
皆さんにとっての成長とは何か。このブログを読んで、考える機会になると嬉しい。
「Iリーグ」
大学1年次、トップチームの試合で僕が得た出場時間はわずか1分。経験のないサイドバックのポジションに配置され、サイドバック陣の層は厚い。紅白戦も5人でサイドバックを回すため、実出場時間は5分、ボールに触れられない日も珍しくなかった。「なぜ自分がサイドバックをやっているのか?」と疑問を抱く日々。同期のぴー(4年)や、樹(4年)がチームの主力に食い込む姿に引け目を感じることもあった。
けれど、この引け目が僕を強くしてくれた。ぴー(4年)と樹(4年)はチームを引っ張るだけでなく、僕の背中も押してくれる存在だった。同じように、Iリーグで共に戦った惟雲(4年)や宏和(4年)の存在も僕にとっては大きなものだ。彼らとは時に意見をぶつけ合いながらも、上でやるという信念にぶれはなかった。「俺らならできるよな」と言っていたのが懐かしい。
今では、惟雲と宏和はチームに欠かせない存在として輝いている。その成長を目の当たりにし、これまでの日々の積み重ねを感じる。
「Iリーグプレイヤー、デンソーカップへの道。」
自チームで試合に出ていない選手が中国選抜に選ばれるのは初めてのことで、当時それは話題になった。デンソーカップでは「お前誰やねん」と言われたけど、「お前こそ誰や」と思っていたな。ただ、そこで感じたのは、信頼を得るには実力で示すしかないということ。そして僕は、「1試合に人生を賭ける」覚悟の大切さを知った。
「勝負強さ」について少し書く。僕はセレクションや本番に強いと言われることがあるが、それは単なる偶然ではなく、積み重ねてきた準備と経験があるからだ。
この勝負強さを僕は「調整力」と呼んでいる。
「プロへの道」
プロを本気で目指す中で、見える景色が変わり、生活も大きく変わった。厳しい世界に触れるたびに自分の基準も自然と高まっていく。孤独や不安を感じることもあるが、この挑戦の過程は本当に面白い。「目標」「感謝」、そして「仲間やライバル」の存在が、僕をさらに成長させてくれている。
この場を借りて「仲間へ」感謝の気持ちを伝えたい。
自分の中には明確にライバルがいた。その一人が香取潤(3年)である。同じボランチとして戦ってきたが、彼は毎回僕の一つ上を行く存在だった。比較され続け、自分で比較する中で、悔しい思いが闘争心に変わっていく。僕の基準を上げたのは香取だ。惟雲(4年)や誉(2年)、ぴー(4年)も僕にとってのライバルだ。真似は難しかったけど、どれだけ良いところを盗んだことか(笑)
もう一人紹介させてもらいたい。川上航立(立正大学4年)だ。高校の同級生で、4年間プロを目指した仲。毎週のように「これじゃプロで活躍できんよ」と言い合い、「最後は気持ちっしょ」で締める会話。
成長には「仲間の存在」が欠かせないものだった。香取を初め、たくさんの仲間には感謝している。
後輩へ
「僕も成長したいんで」と言って自主練を一緒にしてくれた後輩。
「いつもの場所に集合」と言って一緒に夜走り込んだ後輩。
気さくに声をかけてくれるマネージャー。
聞かれる側ではなく、聞く側の自分。
怪我した日の夜、瀬口(2年)は「我慢せず、泣いていいんだよ」と言ってきて、涙がこぼれた。次の日の明治大学戦。瀬口はゴールを決め、朝練でしか見せない僕のゴールパフォーマンスを披露した。
僕はそんな素晴らしい仲間にも恵まれた。ありがとう。
後輩に伝えたいことは一つ、「自分を律すること」を大切にしてほしい。
ブログの題名にある「笑み」には、花が開くという意味も込められている。そして、その笑みの裏には、誰もがそれぞれの想いや経験を抱えていて、みんなの想いを一つのピッチで表現することが、どれだけ価値のあることか。
最後に
どんなことがあっても1年後には、笑い話になる。
だったら後悔しない選択をし続けたいと僕は思う。
これからの方が、もっとシビアな世界であることは間違いない。
僕のストーリーはこれからである。
長い拙い文章でしたが、最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。僕は、前十字靭帯断裂の怪我を負い、大きな結果を残したわけではありませんが、何か小さなことでも感じていただけたなら、とても嬉しいです。僕自身もこの怪我をきっかけにさらに成長していきたいと思っています。
この場を借りて、父や母、祖父母、スタッフの皆様、スポンサーの皆様、そして共に戦ってくれた仲間たち、チームを応援してくださるすべての方々へ、心から感謝の気持ちを伝えたいと思います。僕は、そんな皆様に支えられ、恵まれた環境でここまで歩んでくることができました。
これからも、広島大学体育会サッカー部への温かい応援をよろしくお願いいたします。
中村蒼